税理士・社会保険労務士をめざすうさみみミカエル227

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年末調整とは、いや、そもそも会社員の人の所得税とは

12月は何かと忙しい時期である。
企業の経理もそうで、12月はほとんどの企業で年末調整なるものが行われる。
これをもって、(副業や副収入がない大半の)会社員の所得税が確定する。
今回はこのことに触れていこう。
 
 
◎内容
〇概要
源泉徴収とは
〇年末調整とは
 


〇概要
1.毎月の給与において、定められた所得税額を徴収する(源泉徴収
2.1.を1月から12月まで累計し、年間の本来の所得税額を計算し、1.の累計との差額を精算する(年末調整)
おおよそこのような話になる。
年末調整について説明するには、まず源泉徴収について説明が必要になるので、源泉徴収について確認していくことにする。
 


源泉徴収とは
会社員は毎月1回以上の給与をもらう。
大半の場合ではその際に社会保険料所得税、住民税が控除される。
このうち、所得税の控除を源泉徴収という。
 
なお、住民税の控除は特別徴収という。
※話はそれるが、特別徴収がある以上普通徴収もある。
転職・退職の際に住民税の納付書が家に届くことがあるが、それで自分で納付するのが普通徴収である。
住民税の話は機会があればまた載せるが、所得税源泉徴収も似たようなものである。
 
 
 
毎月の給与の支給、というより手取り額は以下の流れで決められる。
1.基本給をもとに時間外手当等を加算する
2.各種社会保険料を控除する
3.源泉徴収額を控除する
4.住民税や、その他労使協定で控除するものを控除する。
給与明細がこの順に並んでいるのは、2.以降の控除の関係である。
 
 
 
 
 
1.基本給をもとに時間外手当等を加算する
いわゆる総支給といわれるのは各種控除前の1.の金額である。
年収等も1.の総支給の累計である。
 
2.各種社会保険料を控除する
健康保険、厚生年金、雇用保険等を算出する。
健康保険の制度や都道府県によって異なるが、おおよそ以下の割合である。
・健康保険料……給与の約5%(都道府県により異なる)
介護保険料……給与の0.895%(40歳以上)
・厚生年金……給与の9.15%
雇用保険料……給与の0.3%(建設等一部業種は0.4%)
実際は保険料率の表を使うのだが、合計おおむね15%前後と思ってもらえればよい。
なお、雇用保険料以外はほぼ同額を企業も負担する。雇用保険料は負担割合が異なる。
 
3.源泉徴収額を控除する
社会保険料を控除した後の金額をもとに、源泉徴収税額を算出する。
2.の金額が同じでも扶養親族の人数で源泉徴収税額が異なる。
 
4.住民税や、その他労使協定で控除するものを控除する
住民税は前年の所得に応じて定められた金額を徴収する。
その他労使協定で控除するものとしては、社宅の家賃や食費などが考えられる。
 
・具体例
東京都で働く30歳(扶養親族なし)、ひと月の総支給30万の人の場合
健康保険 保険料額表より14,805(9.87%/2)
厚生年金 保険料額表より27,450(18.3%/2)
雇用保険 300,000×0.3%=900
控除する社会保険料=14,805+27,450+900=43,155
社会保険料控除後=300,000-43,155=256,845

源泉徴収税額 源泉徴収税額表より6,750
なお、住民税(概算)12,600とすると、この人の手取りは
300,000-43,155-6,750-12,600=237,495 となる。


 
〇年末調整とは
それでは、本題の年末調整である。
前述の通り、年末調整とは1年間の源泉徴収税額を累計し、年間の本来の所得税額との差額を精算することをいう。

源泉徴収は概算であり、年間の収入が確定する年末で所得税額も精算することができる。
それでは、年間の本来の所得税額はどう計算するのか。

年間の本来の所得税額は以下の流れで計算する。
1.年間の総支給を集計する
2.給与所得控除を算出し、給与所得を確定させる3.各種所得控除を算出・適用する
4.税額を算出し、税額控除の適用および復興税の加算を行う
税額は、{(1.総支給)-(2.給与所得控除)-(3.所得控除)}×(税率)で算出される。
 
1.年間の給与総額を集計する
これは単純に年間の給与及び賞与(いずれも総支給)を合計すればよい。
 
2.給与所得控除を算出し、給与所得を確定させる
給与所得者(いわゆる会社員)には給与所得控除という制度がある。
個人事業主でいう必要経費にあたるものであり、給与総額に応じて設定される。
給与総額から給与所得控除を引いた残りが給与所得となる。
なお、給与所得控除については年間でこのタイミングでのみ登場する。
源泉徴収の際には一切登場しない。
 
3.各種控除を適用する
2.の給与所得控除から各種控除を差し引いた残り(課税総所得)を算出する。
ここでは、年末調整でのみ登場する所得控除を紹介する。


次の控除は物的控除とされ、以下のものを支払った場合に適用される。
社会保険料控除
給与や賞与から差し引かれる社会保険料
無職期間があった人は国民健康保険国民年金なども該当するのを忘れないように。
・小規模企業共済等掛金控除
確定拠出年金など
・生命保険料控除
地震保険料控除
 
次の控除は人的控除とされ、対象となる人(本人、配偶者、親族)がいる場合に適用される。
ただし、それぞれに所得上限がある。
寡婦控除
以前の寡婦(夫)控除からひとり親控除に該当する部分が分離されたもの。
文字通り女性にしか適用されない。
・ひとり親控除
・勤労学生控除
・障害者控除
・配偶者(特別)控除
配偶者がいる場合に適用。
いわゆる103万円、150万円、201万円の壁ができるのはこれが1つの要因。
・扶養控除
基礎控除
誰でも一律に適用、のはずだったが令和2年からは高所得者は適用除外になった。
所得金額から差し引かれる金額(所得控除)|国税庁 (nta.go.jp)
 
ちなみに、医療費控除や寄付金控除(ふるさと納税など)などはここでは出てこないので、年末調整ではなく確定申告をすることになる。
 
4.税額を算出し、税額控除の適用および復興税の加算を行う
2.の給与所得から3.の所得控除を引いた残りが課税総所得であり、これに税率をかけて所得税額を算出する。
その税額から、一定の住宅の新築、改築等に住宅ローンを利用した場合は、その残高に応じて税額控除が適用される。
3.の所得控除とは異なり、税額が直接減る。
マイホームの取得等と所得税の税額控除 (nta.go.jp)
 
最後に、算出した税額に復興特別所得税所得税額の2.1%)を加算して終了である。
この2.1%の復興税、令和19年まで続く予定である。
 

・具体例
先ほど源泉徴収の時に出てきた人の年末調整をしてみる。
ややこしくなるので時間外手当、賞与はなしの場合。
東京都で働く30歳(扶養親族なし)、ひと月の総支給30万の人の場合
毎月の控除
社会保険料 43,155
源泉徴収税額 6,750
住民税はここでは関係しないので省略
1.給与総額の集計
給与収入(総支給)300,000×12=3,600,000
2.給与所得控除、給与所得の算出
給与所得控除 3,600,000円の場合3,600,000×30%+80,000=1,160,000
給与所得 3,600,000-1,160,000=2,440,000
3.所得控除の算出
社会保険料控除 43,155×12=517,860
基礎控除 480,000
所得控除 517,860+480,000=997,860
4.税額の算出
課税総所得 2,440,000-997,860=1,442,140→1,442,000(千円未満切捨)
税額 1,442,000×5%=72,100
復興税額 72,100×2.1%=1,514.1→1,514(円未満切捨)
算出税額 72,100+1,514=73,614→73,600(百円未満切捨)
年間源泉徴収税額 6,750×12=81,000>73,600
これより、81,000-73,600=7,400円の還付となる。
還付、追加徴収は12月に支給される給与や賞与で行ってもよいし、別途でもよい。

 

 

とまあ、このような流れを経て年末調整は行われる。

職員が少ない会社では未だに手計算で年末調整を行なっているところもあるが、大体は給与ソフトに入力すれば自動でやってくれる。

それゆえ、この計算を意識することは少ない。

普段の給料の税金について、どのように決まっているのか知っておくのも悪くないだろうか