税理士・社会保険労務士をめざすうさみみミカエル227

個人税理士事務所で働きつつ資格取得のために勉強、仕事や勉強、その他何かあったことを固くならないように紹介していくブログ。

かんぽ生命と持続化給付金の話

 

まずはこのニュースをご覧いただきたい。
 
 
 
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e565eac24115dc50fe3931111efd3cdbde9d6c4
 
 
 
簡単に言うと見出しの通り、
 
日本郵便の社員が保険業務に関して持続化給付金を申請した
 
・職員に対して不正受給ではという疑いが内外からある
 
・申請した社員について日本郵便は申請取り下げを促している
 
という内容である。
 
なお、別記事では受給済みの社員に対し、給付金の返還も促しているようだ。
 
 
 
 
 
さて、この件について考えなければならないことは以下の通りである。
 
(事実確認)
 
・持続化給付金とは
 
・保険外交員の収入について
 
(考察)
 
新型コロナウイルスの影響の有無
 
日本郵政が社員の申請に口出しできるのか?
 
当該記事のコメントにも説明している人がいるが、改めて整理してみよう。
 
 
 
 
 
 
 
(事実確認)
 
・持続化給付金とは
 
まず、持続化給付金とは何か、申請用のHPを見ていただこう。
 
 
 
https://www.jizokuka-kyufu.jp/subject/
 
 
 
○要件
 
・2019年以前から事業を継続し、今後も継続する意思がある
 
新型コロナウイルス等の影響により、2020年1月以降で月間の売上が前年同月の半分以下になった月がある(青色申告の場合)
 
○支給額
 
法人200万円、個人100万円
 
上記は最高額だが、よほど細々とした事業でない限りはこの金額になる。
 
 
 
新型コロナウイルス等の影響で売上が減少した事業者に対し、売上の補填に限らず幅広い用途で使うことができる、という名目の給付金である。
 
個人の場合は事業所得を得て確定申告を行っていることが大前提である。
 
 
 
しかし、一般的に企業に雇用されている場合の収入は給与所得である。
 
日本郵政の職員も雇用されていると考えると、持続化給付金を申請できるのはどういうことだろうか。
 
 
 
 
 
・保険外交員の収入について
 
職員は郵便の仕事もするが、保険商品を販売する保険外交員としての仕事もしていると考えられる。
 
この保険外交員という仕事、他の保険会社も同様だが収入が会社員としてはやや特殊である。
 
 
 
保険外交員というのは保険会社の従業員・職員であることが多い。
 
つまり、雇用関係にあるということになり、ほぼ定額の給料が支給される。
 
それとは別に、契約高に応じて営業手当(歩合給)が支給される。
 
 
 
所得税法上では、定額給料部分は給与所得となり、他の会社員同様に年末調整の範囲である。
 
しかし、歩合給部分は事業所得となり経費(お客様への粗品等)を含めて確定申告が必要である。
 
今回の郵便局員の件についても同様で、次の収入があったものと思われる。
 
○給与所得
 
・郵便業務の給料
 
保険業務の基本給
 
○事業所得
 
保険業務の営業手当
 
この営業手当が減少したことをもって持続化給付金を申請するに至ったわけである。
 
 
 
 
 
(考察)
 
新型コロナウイルスの影響の有無
 
では、なぜ郵便局員が持続化給付金を申請するほど収入が減ったのであろうか。
 
記事を読んだ人にはお分かりであろうが、以前にかんぽ生命の不正販売があったことはご存じであろう。
 
その不祥事における営業自粛で、当然のことながら新規契約は減少している。
 
 
 
そう考えると、新型コロナウイルス等の影響はないように思えてくる。
 
 
 
しかし、今回の申請では新型コロナウイルス等の影響を立証することは求められていない。
 
行政機関から感染拡大防止のために営業自粛要請を受けた、という場合はともかく、それ以外で立証できるケースはほとんどないだろう。
 
そもそもこの時期に申請を考える以上、直接、間接を問わずかなりの事業が少なからず影響を受けているはずだ。
 
そうなると収入に関する要件は事実上「前年同月比で売上半減以下」のみになる。
 
 
 
実際問題として、郵便局の窓口で他の保険(損保含む)は変わらずに販売されているが、対面の機会が減ったことによりそれらの新規契約が減ったことは容易に想像できる。
 
 
 
これらを考慮するに、今回の日本郵政の職員が持続化給付金を申請したことについて、不正受給に当たると断言はできなくなってくる。
 
 
 
 
 
日本郵政が社員の申請に口出しできるのか?
 
今回の給付金は法人および個人事業主向けである。
 
日本郵政の社員が事業について申請を行った以上、この問題は日本郵政の社員と申請先の機関の間の問題であり、そこに日本郵政は関係しないと考えられる。
 
日本郵政は営業手当に関しては報酬の支払い側でしかない。
 
 
 
何か申請に問題があるのであれば、申請先の機関が却下するなり、支給済みの給付金の返還を要請するなりすればよいのである。
 
少なくとも制度上は(用意した書類に不備がなければ)申請できる。
 
制度上申請に問題がなければ、問題があるのは制度そのものである。
 
しかし、迅速な給付が最優先になる以上は、申請しやすくするほかないのであろう。
 
 
 
 
 
まとめ
 
(事実確認)
 
・持続化給付金は、法人および事業所得を確定申告している個人事業主が申請することができる
 
・保険を扱う日本郵政の職員は、給与所得以外に事業所得がある
 
(考察)
 
・事業所得部分(営業手当)が減ったのはおおよそかんぽ生命の営業自粛の影響だが、新型コロナウイルス等の影響が全くないとは言い切れない
 
・職員個人に確定申告させている以上、日本郵政が口出しできることではない
 
・一応の要件は満たしている以上、不正受給に該当するなら申請先が却下するなり返還を求めるなりすればよい
 
 
 
 
 
今のところ、すでに申請を取り下げる、または返還に応じている社員が存在するようだ。
 
今後どういう動きになるのかはわからないが、日本郵政と社員と申請先の三者の解釈の相違が埋まるのはまだかかりそうだ。
 
もっとも、申請先の意見は出てきた覚えがないが……。